高齢者におけるLDLコレステロール低下治療の臨床的有用性については、依然として議論されています。
この研究では高齢者におけるLDLコレステロール低下治療のエビデンスをまとめることを目的としました。
方法
このシステマティックレビューおよびメタアナリシスでは、2015年3月1日から2020年8月14日までの間に発表された論文をMEDLINEおよびEmbaseで検索しました。
2018年米国心臓病学会(American College of Cardiology)および米国心臓協会(American Heart Association)のガイドラインで推奨されているLDLコレステロール低下薬の心血管アウトカムを対象としたランダム化比較試験で、追跡期間中央値が2年以上で、高齢の患者(年齢≧75歳)を対象としたデータが含まれているものを対象としました。
心不全患者または透析患者のみを登録した試験は除外しました。
主要血管イベント(心血管死、心筋梗塞またはその他の急性冠症候群、脳卒中、冠動脈血行再建術の複合体)のリスク比(RR)をLDLコレステロールの1mmol/L低下あたりでメタ解析しました。
結果
29試験の244090人の患者のうち21492人(8.8%)が75歳以上の高齢者で、そのうち11750人(54.7%)がスタチン試験、6209人(28.9%)がエゼチミブ試験、3533人(16.4%)がPCSK9阻害薬試験でした。
追跡期間中央値は2.2年から6.0年でした。
LDLコレステロール 1mmol/L低下につき高齢患者の大血管イベントのリスクを26%有意に低下させました(RR 0.74 [95%CI 0.61-0.89]; p=0.0019)が、75歳未満の患者のリスク低下と統計学的に有意な差はありませんでした(0.85 [0.78-0.92]; P interaction=0.37)。
高齢者では、スタチン治療(0.82[0.73-0.91])と非スタチン治療(0.67[0.47-0.95]、P interaction=0.64)でRRに統計学的な差はありませんでした。
高齢者におけるLDLコレステロール低下の有益性は、心血管死(0.85 [0.74-0.98])、心筋梗塞(0.80 [0.71-0.90])、脳卒中(0.73 [0.61-0.87])、冠動脈再灌流(0.80 [0.66-0.96])の各成分で認められました。
まとめ
75歳以上の患者では、脂質低下療法は75歳未満の患者と同様に心血管イベントの減少に有効でした。
Efficacy and safety of lowering LDL cholesterol in older patients: a systematic review and meta-analysis of randomised controlled trials. Lancet. Nov 10, 2020