コロナワクチンの接種バイト【体験談】
一部自治体でワクチン接種に従事する医師が不足しているとの報道もあり、ワクチンバイトとはどのようなものかと興味を持ちました。
しかし、体育館や企業でのワクチン接種は、病院での接種と違い、急変時対応ができるのか不安でもありました。
ただ、この新型コロナウイルス感染症という歴史的な事態に、何か貢献したいと思い、今回ワクチン接種に参加しました。
当日まで
M3、日経メディカル、MRTからスポット求人を探しました。
多くのワクチン接種のスポット求人に応募しましたが、なかなか採用されませんでした。
2021年7月9日現在、16件応募し、採用されたのはたった2件です。
特に時給が良い求人は、掲載後すぐに無くなってしまうようです。
ワクチン接種の従事者が少ないと報道されていますが、医師の間では人気なのか、採用されませんでした。
今回はm3さんの求人とご縁があり、自治体主催のワクチン接種会場に従事することができました。
当日までにこびナビの医療従事者向けページで一通り予習しました。
またエピペンサイトのオンライン登録講習を受講しました。
当日の動き
当日は10時頃に現地集合でした。
会場は体育館やジムが複合しているような施設でした。
医師が待機する場所は、少し奥まっているところだったのですが、現地のスタッフさんが丁寧に教えていただき困ることはありませんでした。
今回の会場では15人程度の医師が参加しました。
私は初めての参加だったのですが、すでに5回も従事されている先生もいらっしゃるとのことでした。
初めての参加に際して指定されていた、医師免許やマイナンバーカードのコピー、履歴書、銀行口座情報を提出しました。
ロッカーは準備されていましたが、大きな荷物はなかったので私はすべて持ち歩きました。
貴重品以外はロッカーに預けている医師もいました。
2つの会場が用意されており、私はそのうちの小さいほうの会場とのことでした。
入り口付近には接種者の待機する場所が設けられ、椅子が並べてありました。
事前に事務の方が問診表の記載漏れや、免許証・保険証などで本人確認をしていました。
問診
事務的な確認が終わると医師の問診です。
当日の体調や既往・併存症、内服薬、アレルギー、質問事項の有無などを確認します。
抗血栓薬
問診表には血液サラサラと書いてありますが、特に抗凝固薬を服用中の方にはこびナビを参考に、接種後2分押さえるようにお伝えしました。
アレルギー
アナフィラキシーの既往がある方は30分の経過観察が推奨されています。
コロナワクチンやポリエチレングリコールでのアナフィラキシー既往がなければ接種可能です。
食物アレルギー疑いの方もいましたが、明らかなアナフィラキシーの既往はなく、ご本人と相談し通常通りの接種を指示しました。
免疫抑制
免疫抑制剤を服用されている方もいましたが、病状は安定しており、かかりつけ医からの確認もとれているため接種可能としました。
質問事項の確認
発熱や痛みなどの副反応を心配される方が多かったです。
特に2回目の接種の方からが多い印象でした。
解熱鎮痛剤を頓用してもよいかという質問が数回ありました。
肝機能障害や腎機能障害の指摘、内服薬、薬剤アレルギーなどを確認し、問題なければ市販薬含め、解熱鎮痛剤を頓用してもよいとお答えしました。
実際、私も2回目の接種で熱が出たので、解熱鎮痛剤ですぐ改善したことを正直にお伝えしました。
接種
問診の次は接種に移ります。
接種には7列準備されており、それぞれに看護師と補助の方が1人ずつ担当されていました。
各列には5席用意され、看護師が移動して接種しました。
経過観察
接種後は経過観察スペースに移動します。
経過観察スペースには時計とモニターが備えられていました。
15分(アナフィラキシーの既往などがある方は30分)経過観察し、問題なければ終了です。
モニターには自治体のプロフィールが繰り返し流れていました。
余談ですが、現状ワクチン接種は公費が使われ、
無料で行われているので、このモニターに企業からの広告を募り、
自治体の運営などに回せないものかと少し考えてしまいました。
急変はありませんでしたが、普段勤務する病院とは異なり、
物品も限られていることが予想されるため、
事前にどう動くかイメージはしておいたほうが良いと感じました。
終了後
受付が終了し、経過観察もすべて終わると、接種会場で終了のアナウンスがありました。
医師はその場で解散となりました。
後日、m3から事前準備や当日などに問題がなかったか確認のメールが届きました。
特に問題はなかったことを報告し終了しました。
今回ワクチン接種に参加でき、この歴史的事態に少なからず貢献できたことを喜ばしく思います。
しかし病院外でのワクチン接種は、可能性がとても低いとはいえ、急変時対応ができるのか不安でもありました。
病院であれば急変に慣れているスタッフが多く、人工呼吸器やECMOなども含めた集学的な治療を速やかに行うことができます。
ワクチンの副反応でそのような事態になるとは考えにくいですが、因果関係のない偶発的な急変はあり得ると思います。
特にこのご時世、因果関係がなくても、ワクチンで何かあれば大々的に報道されるでしょう。
ワクチンの有効性は証明されており、ワクチン接種に歯止めがかかることは避けたいところです。
たぶんここまで急変を怖がっているのは、私が循環器内科でさまざまな急変を経験しているからだと思います。
ワクチン接種会場での急変は、これまでのインフルエンザの集団接種や肺炎球菌のワクチン業務からもほぼあり得ないことは理解しています。
動物園に行ってライオンに食べられるのを恐れているような次元の話かもしれません。
しかし、今回のコロナワクチン接種は、社会的影響を考えると安全に施行されなければいけないものと感じています。
安心ためにも、予習と事前のイメージを持っておくことが、有事の際に適切な対応につながるのではないかと思います。
今後もチャンスがあれば参加したいです。