虫垂炎の治療には、手術に代わる抗生物質療法が行われることがあります。
この研究では、米国の25の施設で虫垂炎患者を対象に、抗生物質治療(10日間)と虫垂切除術を比較する非盲検無作為化試験を行いました。
主要評価項目は、European Quality of Life-5 Dimensions(EQ-5D)質問紙を用いて30日間の健康状態(スコアの範囲は0~1で、スコアが高いほど健康)で評価されました。
副次評価項目は、抗生物質群における虫垂切除術と90日までの合併症とされました。
結果
1552人の成人(虫垂結石ありが414人)が無作為に割付けられました。
776人が抗生物質投与群(そのうち47%は入院なし)、776人が虫垂切除術群(そのうち96%は腹腔鏡下手術)を受けました。
抗生物質投与は、30日間のEQ-5Dスコアを基準にすると、虫垂切除術よりも劣っていませんでした(平均差 0.01ポイント、95%信頼区間[CI] -0.001~0.03)。
抗生物質群で90日までに虫垂切除術を受けた人は29%で、そのうち虫垂結石がある人は41%、ない人は25%でした。
合併症の発生率は抗生物質群の方が虫垂切除術群よりも高かったです(100人あたり8.1対3.5、rate ratio 2.28、95%CI 1.30~3.98)。
抗生物質群で合併症の発生率は、虫垂結石がある人で抗菌薬投与群は100人あたり20.2人、虫垂切除術群で3.6人でした(rate ratio 5.69、95%CI 2.11~15.38)。
虫垂結石がない人では抗菌薬投与群100人あたり3.7人、虫垂切除術群100人あたり3.5人と差がありませんでした。
重篤な有害事象の発生率は、抗生物質群では100人あたり4.0人、盲腸切除群では100人あたり3.0人でした(rate ratio 1.29、95%CI 0.67~2.50)。
まとめ
虫垂炎の治療で、抗生物質は虫垂切除術よりも劣っていませんでした。
抗生物質群では、10人に3人近くの参加者が90日までに虫垂切除術を受けていました。
虫垂結石がある患者は、ない参加者に比べて、盲腸切除術と合併症のリスクが高かったです。
A Randomized Trial Comparing Antibiotics with Appendectomy for Appendicitis. N Engl J Med. 2020 Oct 5