低体温療法は、院外および院内心停止後の患者に用いられますが、院内での治療的低体温療法の有効性に関するランダム化試験は存在せず、有効性を検討したデータは限られています。
この研究では院内心停止後の治療的低体温と生存率との関連が評価されました。
全米の Get With the Guidelines-Resuscitation レジストリを使用したコホート研究で、2002年3月1日から2014年12月31日までの間に院内心停止からの蘇生に成功し、米国の355の病院で低体温療法を受けた患者と受けていない患者26183人を対象としました。
フォローアップは2015年2月4日に終了しています。
主要アウトカムは退院までの生存率とされました。
副次評価項目は神経学的予後とし、Cerebral Performance Categoryスコアが1または2(すなわち、重度の神経学的障害を伴わない)と定義されました。
心静止・PEAとVT・VFの心停止について別々に検討されました。
結果
院内心停止患者26,183人中1568人(6.0%)が治療的低体温療法を受けました。
その内1524人(平均年齢 61.6歳, 58.5% 男性)と低体温療法を受けていない患者 3714人(平均年齢 62.2歳, 57.1%男性)を傾向スコアで一致させました。
調整後、治療的低体温療法は院内生存率の低下(27.4% vs 29.2%, RR 0.88, 95%CI、0.80~0.97, P = 0.01)と関連しておりました。
除細動不可能な心停止(心静止・PEA)では22.2% vs 24.5%(RR 0.87, 95%CI 0.76~0.99)、VT・VFでは41.3% vs 44.1%(RR 0.90, 95%CI 0.77~1.05)と同様の関連がみられました。
また、低体温療法は良好な神経学的生存率の低下とも関連していました。
まとめ
院内心停止患者において、低体温療法は退院までの生存率と神経学的予後の改善に関連していました。
Association Between Therapeutic Hypothermia and Survival After In-Hospital Cardiac Arrest.JAMA. 2016;316(13):1375-1382.