季節ごとの冠動脈プラーク性状

冬にplaque ruptureが多く、夏にplaque erosionが多い

詳細な機序は不明ですが、急性冠症候群はその発症に季節性の変化を経験します。

冬に急性冠症候群の発症および死亡率が高いことが多くの研究で報告されていますが、一方で暑さもまた急性冠症候群のリスクを増加させることも報告されています。

季節性の変動は大気圧や風速、日照時間などの複雑な交絡があるかもしれませんが、ほとんどの報告では気温と急性冠症候群の発症の関連が認められました。

この研究では光干渉断層法(OCT)を用いて、急性冠症候群の発症機序(plaque rupture, plaque erosion, calcified nodule)に季節性の特性があるかを評価しました。

 


 

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方法

多施設共同研究でOCTを施行した6か国(75.6%は日本)の急性冠症候群患者1113人が登録されました。

季節は3~5月が春、6~8月が夏、9~11月が秋、12~2月が冬と定義されました。

気候のデータは各国のofficial sourceを使用し、OCTを施行した日の最高・最低気温を調べました。

 

結果

登録された患者の季節ごとの構成は春284人(25%)、夏243人(22%)、秋290人(26%)、冬296人(27%)でした。

冬は高血圧を有する患者が多く(p=0.002)、最高・最低気温は有意に低値(p<0.001)でした。

急性冠症候群の発症機序は全体では561人(50%)がplaque rupture、417人(38%)がplaque erosion、135人(12%)がcalcified plaqueでした。

plaque ruptureは冬に最も多く夏に最も少なく(春50%, 夏44%, 秋49%, 冬57%)

plaque erosionは夏に最も多く冬に最も少ない(春39%, 夏43%, 秋39%, 冬30%)

ことがわかりました(p=0.039)。

またマクロファージを伴うplaqueは冬に最も多かったです(春67%, 夏64%, 秋60%, 冬71%, p=0.046)。

plaque ruptureを認めた群は他の群と比べて、最高・最低気温ともに有意に低値でした(最高気温: plaque rupture 18.5±8.7℃, plaque erosion 20.0±8.4℃, calcified plaque 19.8±9.5℃, p=0.02 / 最低気温: plaque rupture 9.6±9.0℃, plaque erosion 11.3±8.9℃, calcified plaque 10.8±9.2℃, p=0.012)。

また高血圧について評価するとplaque rupture群でのみ冬に高血圧が有意に多いという結果でした(plaque rupture: p=0.010, plaque erosion: p=0.368, calcified plaque: 0.230)。

性別ごとにもプラーク性状を評価しましたが、季節性の変化はありませんでした。

この研究では急性冠症候群の季節ごとの発症機序の違いを示しました。

冬にplaque ruptureが多く、夏にplaque erosionが多かったです。

先行研究で冬に急性冠症候群の発症が多いことが示されています。

これはインフルエンザなどの呼吸器感染症により全身性の炎症が促進され、冬のプラークの不安定性を強めるのではないかとされています。

実際にこの研究ではマクロファージを伴うプラークを冬に最も認めました。

また冬は寒冷刺激がカテコラミンを上昇させ、血圧を高値にするとされています。

高血圧症はplaque erosionよりplaque ruptureに一般的であることも報告されています。

炎症や高血圧により冬のplaque ruptureが増えるのではないかとdiscussionされています。

また夏にplaque erosionが多いのはhemoconcentrationにより内皮局所のshear stressが増すからではないかと考察されています。

limitationとしてはOCTでしか評価していないこと、75%が日本人であったこと、気温のデータはOCT施行時点のもので発症時ではないこと、他の環境因子(気圧、風速、日照時間、大気汚染など)は評価できていないことを挙げています。

 

まとめ

この研究では急性冠症候群の季節ごとの発症機序の違いを明らかにしました。

冬にplaque ruptureが多く、夏にplaque erosionが多かったです。

季節を考慮したアプローチは急性冠症候群のより有効な予防に必要かもしれません。

Seasonal Variations in the Pathogenesis of Acute Coronary Syndromes. JAHA 2020

 

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