AIの心不全診断は専門医と同等
現在、心不全はパンデミックの状態になりその有病率は増加しています。
そして心不全は死亡率が高いことが知られています。
心不全は単一の疾患ではなく、構造的・機能的な心疾患に起因する複雑な症候群であり、正しい診断は専門家にとっても難しいことがあります。
心不全(HF)は左室駆出率が低下したHFrEF、駆出率が中間のHFmrEF、駆出率が保たれたHFpEFに分類されています。
新たなエビデンスや新薬の登場により、心不全治療は複雑化する懸念を抱えています。
そこでビッグデータや知識の保存・取得・復元が容易になるなど、情報通信技術の飛躍的な進歩により、人工知能(AI)が循環器内科で重要な役割を果たしつつあります。
Clinical Decision Support System(CDSS)は、医師の臨床意思決定を支援する技術です。
AI-CDSSは、心不全診断における医師の診断を支援する可能性を秘めています。
この研究では韓国の第三次医療機関において、心不全専門医とAI-CDSSとの間で、心不全の3つのタイプ(HFrEF、HFmrEF、HFpEF)の心不全診断を評価しました。
結果:後ろ向き研究
AI-CDSSの開発には、1198人(トレーニングデータセット: n = 600と試験データセット: n = 598)の後ろ向き研究のデータが用いられました。
試験データセットの598人は心不全患者490人、心不全なし108人が含まれ、心不全患者は高齢者(73.1±13.8歳 vs 64.8±13.8歳, P < 0.001)、男性(52% vs 37%, P = 0.005)が多く、NT-proBNPが高値でした。
心エコー図では心不全患者は左室駆出率が低く(45.5±17.4% vs. 64.1±6.5%,P<0.001)、その他のエコー指標も不良でした。
HFrEF 199人(40.6%)、HFmrEF 63人(12.9%)、HFpEF 228人(46.5%)でした。
専門家主導CDSS、機械学習CDSS、それらのハイブリッドCDSSで比較すると、HFrEFとHFmrEFでは一致率は100%でした。
HFpEFでは一致率は専門家主導CDSS 82%、機械学習CDSS 79%、ハイブリッドCDSS 99.5%で、no-HFでも同様の結果でした。
HF全体では専門家主導CDSS 90%、機械学習CDSS 88.5%、ハイブリッドCDSS 98.3%とハイブリッドアプローチでの一致率が良好でした。
結果:前向き研究
呼吸困難患者97名を対象とした前向き研究では、AI-CDSSの診断精度を医師と比較して評価しました。
43人(44%)に心不全が認められ、AI-CDSSと心不全専門医との一致率は98%でしたが、非心不全専門医の一致率は76%でHFpEFでの診断率が低下していました。
まとめ
AI-CDSSは心不全の診断精度が高いことが示されました。
AI-CDSSは特に心不全専門医がいない場合の心不全診断に有用であると考えられました。
Artificial intelligence for the diagnosis of heart failure. NPJ Digit Med. 2020 Apr 8